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夢のみとりz

見取り図を書いたり、看取ったり……黙って見とれ?はいはい。。。

家族の肖像4 Stranger than Paradise

2009年12月31日。紅白のステージ。

シム・チャンミン氏はなんだか頼りなくうつろに見えた。
私は、こんなに東方神起のことを気にかけ出す前で、この時この映像をアメリカの自宅でリアルタイムで見ていたのだった。5人の歌はとても上手だった。しかし、おじぎをしない2人。深々と頭を下げる3人。そこにどんな意味があったのか、私は知らなかった。でも、トークもなく、はけていく5人の硬い表情。その前にも何回か日本のTV番組で見ていて、面白いトークを披露してくれていたのでその時はただ不思議な気がした。

私は気付かなかった。彼の心が血を流しているだろうということ。
そして、彼がその時に一体どんな思いで紅白の観衆を見ていたのか。

チャンミン氏はソウル市の出身で、他のメンバーがオーディションを経ているのにひとりスカウトで選ばれてSM社に入り、東方神起となった。彼はそのことを「ターニングポイント」と語っている。韓国では非常に層が薄いと言われる中流の家庭。国語教師の父、母、妹が2人いる「長男」。東方神起では末弟の役割ではあったが。宗教は仏教と言われている。

彼には足りないものが無い。愛のある家庭と、望まれての芸能生活、頭脳、恵まれた容姿と素質。王子様と呼ばれる彼。その上人一倍努力家でも有って。そんな彼が初めて異文化を体験したのが日本での生活だったのだろうと思う。負けず嫌いの彼。日本語は多分メンバー中で一番良く出来たし、それは彼が一番勉強していたからでもあっただろう。そして、彼が日本語を自分のものにしようとしていたのは、彼の韓国人としてのプライドの高さからも来ていた気がする。他の兄たちがマンガやアニメからと言っているのに、彼一人は「文法からしっかりとやった」と言ってのけるくらいでもあったのだから。

ともあれ、5人時代の彼は可愛くて、大食漢で、末っ子なのに腕っ節が強くて、喧嘩でも毒舌でも兄たちをやり込める、「最強様」。5人は喧嘩しながらも仲が良くて、慣れない日本での生活を支え合いながら夢に向かっていた。そんな彼がときおり見せるぽつんと寂しげな姿。ちょっと内向的な、そんな行動に兄たちの誰かが気づき、声をかけたり腕を回したり、からかったりする。そんな様子だからか、5人時代からの彼のファンは彼に母か姉の様な思いを抱く人が多かったのではないだろうか。

東方神起の幸せな末っ子チャンミン氏。

そんな彼を何よりも傷つけたのは、疑うことなく東方神起の分裂であっただろう。家族にも例えていた「連理の枝」を割かれることは、まさに生木を引き裂くような痛みではなかったのか。その責任は、やはり3人の兄たちにあったのかもしれない。確かに現実に、彼は「何も変わらなかった」立場であり、「選択を迫られる位置に居なかった」のだ。「選択」を強いたのは3人の兄たちで有っただろう。そして、彼は自分の道を選んだ。血を流しながら..

私は東方神起の分裂は、日本と韓国の間に起きてしまった文化摩擦の一つの形でもあると思っている。
彼らは日本でその芸能生活の半分を過ごしていただけに、日本のシステムや生活を観察し、韓国と比較できる位置に立ってもいた。日本で成績を上げれば上げるほど、その違いが明らかでもあっただろうし、韓国のアイドルの短命さも知っていたと思う。何より彼らは日本語が上手くなると共に非常に日本の芸能界に溶け込んで来ていた。ファンだけでなく、共演者やスタッフ皆にそのひょうきんさや、歌のうまさなど評価する人々が非常に多かったことからもそれがわかる。

しかしチャンミン氏は「自分は外国人」と言い続けた。昨年のアエラのインタビューでは、彼の韓国人としての強いアイデンティティーも伺える。彼は他のメンバーが、無意識に日本に同化していく中で、ひとりStrangerで有り続けたのではなかったか。

そして分裂が起こったとき、それは多分に3人の日本への芸能人としてのアイデンティティーの移動(渡り)を意味したのではないだろうか。だから、ユノ氏、チャンミン氏は韓国アーティストとしてのアイデンティティーを守り、SM社に残ることを決めたのではないのか。ちょうどその時には、K-POPを国策として世界に輸出しはじめようと言う時期にも重なったはずである。東方神起はその先鋒を切らねばならない筈だった。これは韓流ナショナリズムというべき動きでもあり、この訴訟に激怒したSM社が「国家的詐欺」という言葉を使った理由がここからも推し量れるように思う。しかし、逆にSM社は3人にとっては檻のようなものであったろう。韓国というより韓流や、K-POPからのそれは亡命でもあったのだと思う。

家族とも思った兄たち。その兄たちの「裏切り」は彼には辛く、理解を超えたものであっただろうか。認められないものであっただろうか。あの時、「日本を代表する歌手のみ」が参加できるはずの紅白歌合戦に出場しながら兄たちを奪った「日本」の観衆の前で日本語で歌わなければいけない苦しみは日本の聴衆に理解されることが有っただろうか。

私はその時のチャンミン氏に謝りたい。貴方が描いた夢、誇り高い韓国人としての夢、それを5人で叶えようとしていた矢先に奪ったのがもしかしたら「日本」であったかもしれないこと。

ごめんね。私たちはきっとあなた達を愛しすぎていた。

二人でカムバックに臨んだ際に、異常なまでに努力し、パフォーマーとしての力をつけた貴方。カムバック後の発言では渡り鳥と3人をばっさりと切ってしまった貴方。SMファミリーの一員で有ることを見せつける貴方。舞台を自分が広いと感じてしまったらお客さんに分かってしまうといい、そして、自分のキャラクターではないと言いながら、ユノ氏との「関係値」を見せるのを期待されている事がプレッシャーだと言ってしまった貴方。そんなふうに貴方が未だに悩んで、3人の事を超えよう、超えようとしているのを見るのは私のような者にはとても辛い作業だ。貴方はParadiseに残ったはずなのに。

私は貴方が3人を許す必要はないと思う。貴方が正しい、間違いと思うその観点で判断するならきっと3人は正しくないだろうと思うから。ただ、貴方にとって永遠に壊れることが無いと思われた「家族の愛」という絆。あなたにとってはかくも自然に内側に存在し、外側からも与えられていたもの。それはもしかすると3人の兄たち、いやそのうち二人だけにとってかもしれないが、初めからは存在しないものであったかもしれない。二人は苦労して、「努力」してそれを得ようとし、作りあげようとしていたように私には見える。だからそのことを体にも刻んでしまったのかもしれない。そのことを貴方が分かる時が来るだろうか。Paradiseを後にした3人の兄たちはそれでも「幸せだ」という。Paradiseには両親と子供たち、完璧な家族の肖像がある。美しく正しい者たちは中にいて、その外側には愛人や不倫や庶子やら汚いもの、間違ったものが居るのだとしても。

グループがデビューしてまもない時期のインタビューに答えて「ヒゲを生やして踊る30代の東方神起」は想像できないと言ったあなた。そんな貴方がヒゲを生やし、ロン毛で少しダーティーな「東方神起」を30代になって続ける姿をあえて私は見たいと思う。王子様ではないそんな姿が見られる日は来るのだろうか。貴方は二度目のターニングポイントをもう過ぎたのだろうか。

TAXI。動画はお借りしています。不倫は文化、ですよね…???

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