夢のみとりz

見取り図を書いたり、看取ったり……黙って見とれ?はいはい。。。

みちならぬこと

昨日、前記事を書き上げた直後に文春のスクープの件がTLに流れてきました。そしてLivedoorから先ほど荻上チキさん謝罪のニュースが流れました。奇遇といえば奇遇です。

news.livedoor.com

しかし、なぜ婚外恋愛を不倫と呼ぶのか?

ウィキとかには「金妻」が初と上がってますが、理由は載ってませんでした。ウィキはまあそんなものだとして、一夫一婦制が定着しはじめた明治期の「姦通」から「不倫」に至る流れに男女の関係が「性関係の所有」から「恋愛関係の所有」に変化した事が見てとれそうだなと思いました。そして「不倫」という言葉の発生はある意味、「金妻」(80年代後期から90年代前期)の時期に結婚制度が恋愛を基本とする制度に完全に移行したことの指標ではないか?だからこそ「不倫は文化」になったともいえるでしょう。

「みちならぬ行い」と深刻化することが姦通罪の廃止による女性の結婚制度離れをどれだけ食い止めたかは不明ですが、、不倫という言葉の狭義化は婚外の恋愛に一種のトレンディな「格調」を与えこそすれ、抑止につながったようには見えず、かえってそこに恋愛のオルタナティブなマーケットを造ってしまった感はあります。しかし、一方で言葉の既存の中心的用途はあっという間に失われました。

ポリアモリーを肯定するスタンスという事もありますが、自分は荻上さんは、婚外恋愛、性関係にあったこと自体で謝「罪」すべきであるとは思いません。法的にも「罪」ではない事はあきらかですし。むしろ、法律に抵触するとすればこのスクープを報じた文春側について私信である筈のLINEのやり取りを公開をしたことにその非があるという声も上がってます。

Livedoor記事文面から判断する限りでは彼の謝罪は、妻、家族と相手の女性、そして周囲に向けられたものという事で少なくともSMAP謝罪のようにどこに謝っているのかわからないというフラストレーションは記事を読んでも起きなかったのですが、それでもこの謝罪がメディアを通じて行われたことに考える部分が生じました。

この問題を語るほぼすべてのメディアがチキさんを表現するのに「気鋭の論客(評論家)」という見事な紋切り表現をつかっていること、また、TV,ラジオなどの視聴者とみられるツイアカなどが彼の(多分清廉、知的な)イメージの失墜についてやはり落胆の声を漏らしていること。

これはチキさん自身放送で少し違和感があるとぼやいていたことですが、講演会などで最近、なにか芸能人のような紹介のされ方や反応が来てしまうといったことに思い当りました。そして多少飛躍した比較ではあると思いますが、それはショーンKさんの学歴詐称問題があったとき、彼の姿がメディアと観客に「造られた」ものであったがゆえに彼は消えてゆくしかなかったという経緯を彷彿させるものがあります。

もちろんショーンさんの「華麗さ」と比べると、荻上さんは時に少しフライング気味ではあるものの、人懐こくさくさくとした語りが特徴です。でもインタビュー時には切っ先の鋭い質問を次々くり出し、返しも的確です。なかでも題材を毎回きちんと事前勉強し、検証しながらわかりやすく解説する態度は、本当に地に足がついている印象。取材も丁寧な印象ですし、なにより資料にあたってから物申す学究的な態度、基本が見えるのが好きです。まあ私にとってはいつもラジオを聴いたり、書籍を読んだりしているので、彼のいうような紋切イメージはあまりないのですが、それでも彼自身が違和感を感じ始めるほどにはメディアによって彼のイメージの構築と固定化が図られていた、ということはあるのではないか。そしてそれは他でもな「アイドル化(そして社会学上のの他者化)」ではないか、と思うのです。

「アイドル化」してしまった人々が「みちならぬ」と一旦断罪されたなら、すべて泡のように消えればいいのか?まるで最初から存在しなかったかのように?*1

どのような行いであっても凡て許されるわけではないというのは確かなことですが、モラルも法律も人間が造るものである以上、必ずバイアスを含みます。例えばセックスワーカーが蔑むべき職業だというのも一つのバイアスでしかないのと同様、一夫一婦制も恋愛結婚制度も必ずしも普遍的なものではない。売春が合法な地域も違法な国もありますし、違法であっても内容は売春と変わらない性サービスを提供するところも日本はじめ多くあります。違法にしているからモラルが高い、とは言い切れない。そして見方をかえれば、主婦も「特定の相手とのセックスワーク+家政婦」とみることができます。そしてアイドル化とは、バイアスがまるで普遍的なもののように強く固定化している状態と私は見ます。それをほどいていくのは、まずは我々の認識の変化ではないでしょうか。

荻上チキ氏を知らない方もあまりいないでしょうが、荻上さんがパーソナリティを務めるSession22、最近一番面白かった「日本会議」の回をこちらに貼らせて頂きます。


22 青木 理×山口智美×荻上チキ「日本会議」2016.06.16

*1:そんなのは、トン分裂騒動の時に、というかグループの初期からファンは嫌というほど見たのではないですか?どちらが先だとかは言いません。分裂後はなにせなにかがあるごとに「別グループだから」とかいう言説。要は自分の思い通りにならない「像」は「視界から消えてほしい」という言説を。もちろん今回のユチョンさんの件でも早々に、ファン(JYJギャラリー)から排斥されるという事態が起こっていますし、企画会社、芸能界そのものが彼らが生身ではないかのように扱う。ユチョンさんのファンは彼の存在が芸能界から消えてしまうことを大変に危惧されていることと思います。