夢のみとりz

見取り図を書いたり、看取ったり……黙って見とれ?はいはい。。。

嫌悪感による奇妙な政治学: デイヴィッド・ピザロ TED.com

前記事で書きましたが、何かに対して嫌悪感を持つ、その度合と政治的なスタンスの間にはどうも相関性が有るようだ、という心理学者、デイヴィッド・ピザロの発表です。よろしければ御覧ください。全部に全部が当てはまると言うわけでも無いでしょうが、かなりなるほど、と思いました…

動画、お借りしました。

17世紀の話です ジュリア・トファナという女性が 香水の商売で大成功を収めていました 50年以上も 続いた彼女の商売は まあ 彼女が処刑されたことで突然終わることとなりましたが (笑) 罪は 600人もの男性の殺害 あまり良い香水ではなかったんです 実は その香水は 全くの無臭・無味・無色でした しかし 毒としては最高のもので 夫を殺害しようと思う女性が何人も 彼女の元を訪れたのです 当時 毒殺者というものは 貴重で恐れられる存在だったんです ヒトを毒殺するのは たやすい事ではないからです ヒトにはいわば毒探知機が備わっているのが理由です これは新生児にでさえ見られます もしこの反応を見たいなら 苦い物質や酸っぱい物質を 数滴与えてみるといいです 舌を突き出し 鼻にしわを寄せた顔を 見ることが出来ます 口の中のものを 出そうとしているようです この反応は大人では さらに発達し 成熟した嫌悪反応となり もはや 毒殺の危険だけにではなく 何らかの物理的汚染の危険にも 反応するようになります 表情は非常に似ていますね ですが 成熟した嫌悪反応は 物理的な汚染物質を避けるだけではなく 様々な研究の結果から 我々の道徳的信条や 内奥に抱く政治的直観にまで 影響することがわかってきました 一体これはどういうことなのでしょうか 一般的な感情について少し理解することで この過程を理解できます 人類共通の基本的な人間の感情は 我々を 望ましい事をするように仕向け そうでない事をさせないために あるのです これは一般的に 我々の生存に寄与します 例えば「恐れ」という感情は 非常に危険な行為を避ける役割をしています この写真は彼の死ぬ直前に撮られました (笑) 冗談ですが この写真が興味深い理由は 大半の人はこんなことはしないからです もししたならば 死んでいるでしょう しないのは 遠い昔から 天敵に対する 「恐れ」が作用しているからです 「恐れ」が保護的な恩恵をもたらすように 「嫌悪」も同様の恩恵をもたらすようです 違いは捕食者や 高所などの危険ではなく 毒や病気など 私たちの体調を 悪くする原因となるものから 回避させるという点だけです 「嫌悪」という感情が非常に興味深いのは この感情が非常に簡単に 誘発されることが一因です 実際 他のどの基本的な感情よりも 誘発されやすいものでしょう ここで2つの画像をお見せします きっと 嫌悪感を引き起こすはずです 嫌な方は見ないで下さい 合図しますから (笑) 毎日見てるでしょう?何てことないです(笑) (観衆:気持ち悪い) もう大丈夫です 見なかった方はこっちを向いてください これに対して恐らく大半の人が 強い嫌悪感を持ったでしょう  見なかった方のために 世界共通に嫌悪感を誘発するものを さらに幾つか挙げてみます 排泄物 尿 血 腐った肉など これらを避けたいと思うのも当然です 体が汚染される可能性があるからです 実際 病的な外見や 異様な性行為などもまた 強い嫌悪感を引き起こします ダーウィンは恐らく体系的に人間の感情について 調査した最初の科学者の一人でしょう 彼は嫌悪反応の普遍的な性質や根強さを 指摘しました これは彼の南米旅行における逸話です 「ティエラ・デル・フエゴで原住民が 私の食べている 冷たく保存された肉を指で触れて その柔らかさに嫌悪感を示した  一方で私は 自分の食べ物が野蛮な未開人に 触れられたことに嫌悪感を持った 手は汚くは見えなかったが」 彼は後にこう記しています  「別に構わない 親友にも野蛮な者はいるからね」(笑) このように簡単に嫌悪感を感じるのは この古いイギリスの科学者だけではないんです 私は最近 リチャード・ドーキンスと ドキュメンタリーの収録で話す機会がありました そこで何回も彼の気分を悪くさせることに成功しました ご覧下さい (リチャード・ドーキンス)我々は求愛行動と性行為によって発達してきた これらは一晩で取り除くことは困難な 深く根差した感情や反応に帰属している 私がこのシーンで気に入っているところは ドーキンス教授が本当に吐きそうになっているところです 彼は後ろに飛びのいて吐きそうになりました  これを三回も取り直したのですが 三回とも彼は吐きそうになりました (笑) 本当にこちらに向かって吐くのではと思いました しかし嫌悪の特徴は 人類共通の強い反応だというだけでなく 連関を通じて作用することにもあります つまり 汚らわしいものが清潔なものに触った時には 清潔なものは汚らわしいものになります その逆は起こりません もし誰かにある物、人物や 集団全体が不快なものであり 避けるべきであると説得したいのなら これは戦略としてとても有効です 哲学者のマーサ・ヌスバウムは この様に言っています 「歴史を通じて ある種の嫌悪感を引き起こす ヌルヌル、悪臭、ネバネバ、 腐敗、不潔などの性質は 繰返し繰返し ユダヤ人、女性、同性愛者、不可触民、 下層階級の人々と結び付けられてきました これらの人は肉体的に汚されているとされたのです」 このようなものが歴史的にどう利用されてきたのか いくつかのショッキングな例をお見せしましょう これは1938年出版の ナチスの子供用の本からです 「あの男たちを見てごらん シラミがたかっている顎鬚 不潔で突き出た耳 シミがついて油っぽい服などを ユダヤ人は不快で甘い匂いがしているから もし鼻が利くなら ユダヤ人の匂いがするでしょう」 最近のものでは 同性愛者は不道徳であると 説得しようとしている例があります これは反同性愛者のウェブサイトにあったものです 「同性愛者の下劣な性行為は死に値する」 彼らは「自分の嘔吐物を食べる犬や 自らの排泄物にまみれ転げまわる雌豚のようだ」 このような嫌悪感を招く特性が 好むべきでないとされた 社会的集団に直接結びつけられています 私たちが道徳的判断における嫌悪感の役割を 調査し始めた当時 興味をもったことの一つは このような説得の仕方が嫌悪感を抱きやすい人に より強く働きかけるかどうかです 他の基本的な感情と同様に 「嫌悪」は人類共通の現象である一方で 嫌悪に陥りやすいかには 個人差があるようです 先ほど不快な画像をお見せした時に その事に気付いたかもしれません この傾向を測る方法は 他の心理学者達によって生み出されました 方法は単純で人々に幅広くたくさんの状況を想定してもらい 嫌悪感の度合いを尋ねるのです いくつか例を挙げてみます お腹がすいていても 大好きなスープが 使用後 完全に洗浄されている ハエ叩きで混ぜられていたら飲まない そう思う ------- そう思わない (笑) 線路下のトンネルを歩いていたら 小便の匂いがしました  非常に不快になる ------- 全くならない この種の質問を十分にすれば 嫌悪のしやすさを示す 全体的なスコアが得られます このスコアは実際に重要な意味を持ちます 研究室に被験者を呼び 安全だが気分を害する実験に 参加したいか尋ねます 例えば 犬の糞のように形作られたチョコレートを食べたり 健康に全く害はないが 気持悪い幼虫を 食べるとかです 先ほどの質問で測ったスコアを見れば その人が この実験の参加に同意するかが予測できます このようにして集めたデータを 政治的・道徳的信条と比べてみると 一定のパターンがあることが分かりました 心理学者のヨエル・インバーと ポール・ブルームと共同で行なった 三つの研究どれからも 私たちは 気分を害しやすいと報告した人々は 政治的により保守的であるということを発見しました 別の見方をすれば とてもリベラルな人々は めったに気分を害さないということになります (笑) 新たに再度行われた調査で私たちは より莫大なサンプルを見ることができました ほぼ三万人ものアメリカ人の回答サンプルです そこでも同じパターンを見つけました ごらんの様に 政治的にとても保守的である人々は 気分を害されやすいと 報告する傾向にあるのです このデータを使うと 政治上の好みや嫌悪感の抱きやすさに影響する 周知の要因を統計的に調整できます つまり 性別、年令、収入、教育 基本的人格まで 調整することができたのですが そこから得られた結果は同じでした 実際に自己申告による政治的信条だけではなく 投票行動を見ると 地理的に国全体を見ることができ このようなことが分かりました 人々が嫌悪感を感じやすい地域では マケイン候補がより多くの票を獲得していたのです ですので これは自己申告による政治的信条だけではなく 実際の投票行動も予想できることになります また 私たちはこのサンプルで 世界中を見ることができます 121の国々で私たちは同じ質問をしました ご覧の様に この121カ国を 10の地理的に異なるグループに分けました どこの地域でも これが示すのは 嫌悪感の抱きやすさと 政治的信条の関係です どの地域を見ても 似通った結果を得られました 異なる方法で 嫌悪感の抱きやすさを測った 研究グループもありました 彼らは嫌悪感を感じやすいか尋ねるのではなく 生理的な方法によって判断しました 皮膚コンダクタンスを測ったのです その結果 政治的に保守的である人々は 先ほど見せたような不快な画像を見せたときに 生理的により喚起されると 分かりました 興味深いことに 彼らの研究結果で示されたことは 私たちの行なった研究の結果と同様に ここでのもっとも強い影響力のひとつは 容易に気分を害しやすい人は 政治的により保守的になりがちであるばかりではなく 同性婚や同性愛 そして性的な領域に関わる 社会の道徳的な問題の大半に否定的であるということです ですので この研究で生理的な喚起は 同性婚に対する態度を予想しているのです しかし 嫌悪のしやすさと政治的信条を関連付けている これらすべてのデータがそろっても どの様な因果関係があるのかという疑問が残ります 嫌悪感は本当に政治的・道徳的信条に 影響するのでしょうか これに答えるには実験的手段を用いなければいけません 被験者を研究室に呼び 彼らに嫌悪感を起こさせ コントロールグループと 比較をすることです 過去五年間に渡って 多くの研究者がこの実験を行ってきました 結果は大体同じようなもので 人々が嫌悪感を抱いているときには 彼らの態度は政治的志向が保守的になり 道徳的にも同様に保守主義になるのです つまり 嫌悪感を伴う臭いや味 ビデオや後催眠暗示 私が見せたような画像 さらには 病気が流行っているので用心し 清潔さを保つために手洗いをするようにと 勧めることでさえも 全て人間の判断に同じような影響を与えるのです 私たちが最近行った研究から例を出してみます 参加者に様々な社会的集団に対しての 意見を簡単に述べてもらうというものですが 悪臭のする部屋と普通の部屋の二つを用意しました これで分かったのは 悪臭のする部屋では 参加者は同性愛の男性に対して 否定的な意見を述べるということです アフリカ系アメリカ人や老人などを含む 他の様々な社会的集団に対する意見には 影響はありませんでした 悪臭は同性愛の男性に対してだけ 否定的な態度をもたらすのです 他の調査で私たちは参加者に 豚インフルエンザが流行っていたので 蔓延を防ぐために 手洗いをするように喚起しました 参加者の一部には 手洗いを喚起している張り紙の横で アンケートに答えてもらいました その結果わかったのは 手洗い喚起の張り紙の横で アンケートを取ると人々は 政治的により保守的になるということが分かりました さらに彼らに様々な行為が 正しいか間違っているかを尋ねました そこでも手洗いの喚起をするだけで 彼らは道徳的により保守的になるということがわかりました 特に 多少タブーであるがほとんど当たり障りのない 性行為について尋ねると 手洗いの注意喚起をするだけで 彼らは道徳的により間違っていると考えるのです 当たり障りのない性行為の例を挙げてみます まず シナリオを与えます 例えば 祖母の留守宅を預かっている 男性が 不在の祖母のベッドで 彼女とセックスをしたとか 別の例では 女性がお気に入りのぬいぐるみに寄り添って 自慰を楽しんでいるとか (笑) 人々は手洗いを喚起されていたら これらの行為により嫌悪感を抱くのです (笑) もはや 感情が私たちの判断に影響を及ぼしていることに 驚きはないでしょう つまり これが感情の働きの一部です 感情は私たちがどう振舞うかだけでなく 我々の考え方も変えるのです 嫌悪感の場合で 多少より驚きであるのは この感情の影響の範囲です 嫌悪感は汚染の危険がある場合 周りの見方を変えるという意味では とても有益な感情です しかし 毒の摂取を防ぐためにある感情が 次の大統領選挙で誰に投票するかを 予想できるということは考えにくいです 嫌悪感が私たちの道徳的・政治的判断に 影響を与えているかどうかという疑問は 非常に複雑なものであり 判断の内容に依存しているのでしょう そして科学者として科学的方法は時に この種の疑問に答えるには 不十分であると考えるしかありません しかし 私が確信していることは 少なくとも 私たちがこの研究でできることは まずどのような質問をすべきか指摘することです ありがとうございました(拍手)

オリジナルの字幕入り動画が貼れないため、日本語スクリプトをお借りしてきました。
出典URLはこちらです。
http://www.ted.com/talks/david_pizarro_the_strange_politics_of_disgust?language=ja
こちらでは、字幕入りで動画を見ることができます。